Last day


冷たく悴む細い指先。 白く吐く息。 私はかれこれ3時間は此処にずっと立っていた。 愛する彼と待ち合わせ。彼と私はつき合っていた。 いや、私はつき合ってると思っているが、彼はつき合ってるとは思ってないかもしれない。 だって告白もされなければ≪好き≫だとも言われた事はない。 ましてやデートもしたこと無ければ、甘い雰囲気も皆無。 友達はそれはつき合ってるとは言えないと言われてしまった。 自分でもそう思うときもあるけど、彼は不器用にも優しくいつも、とろくさい私を助けてくれ手を引っ張ってくれる。 それに「私がつき合ってるよね?」って聞いたら、何も言わなかったけど、耳は赤くなってたし無言は肯定というしね。
彼が一番に優先するのはボンゴレ10代目のこと。 10代目命だ。 そんな彼を私は好きになった。 だから彼が私より10代目を優先するのは別にいいと思っていた。 だけどね……私も恋する女だった。 1度だけでもいいから貴方を一人じめしたくなっちゃたの。 私の最初で最後の我侭。
私は思い切って10代目とリボーン君に打明けた。 リボーン君には私の事情ばれてたみたいだけどね。 10代目はというと「気づいてあげれなくてごめん」と涙を流してくれた。 出来るだけ協力するといって「今までありがとう」と言われた。 とっても優しい仲間思いのマフィアのボス。 そんな人だから隼人も私も付いていく気になった。 10代目、私がいなくなっても隼人をよろしくお願いします。 ああ、貴方がいてよかった。
ボンーボンーボンーと夕方の6時を鳴らす鐘の音。 待ち合わせは9時。 隼人は来てくれるだろうか。 不安が渦巻く。 それと同時に、このまま私を忘れてくれればいいと思う心。
今日隼人を呼び出したのにはちゃんと意味がある。 今日でなくてはいけなかったのだ。 私は原因不明の病気にかかっている。 心臓病にも似ているが少し違う。 手術や移植をしても治る見込みがないのだ。 待っているのは死のみ。 そして私は、次の発作がきたらもう駄目だろうと言われていた。 医者に言われてから、奇跡的に1年はもった。 本当に奇跡としかいいようがないほと生きながらえたと思う。 でも最近心臓がだんだんと可笑しくなっていくのが分かった。 そして私の頭も、もう残された時間は…今日までしかないと警鐘を鳴らしていた。 勘だったが、私の勘ははずれた事がない。 唯一自慢できる特技だった。 今日ほどこれがあってよかったと思った日はない。
私は死を覚悟した。 もう直ぐ死ぬと分かって怖くなかったといえば嘘になるが、前から分かってたということもあるが、私も一応マフィアだ。 死への覚悟はある程度してある。 でもね、もう死ぬと分かった瞬間、隼人、貴方を一人じめしたくなっちゃたの。 最後ぐらい一緒にいて欲しいと思うのは普通でしょ? だから彼に時間と場所だけを教えて此処に来てと一方的に言ってきたの。 もちろん10代目は協力して今日は私と隼人の任務はなしにしてくれたわ。 でも彼がきてくれるかは五分五分。 今まで待ち合わせをしたことなかったし、今日は10代目の為に何かするって言ってたもの。
もし彼が来なかったとしても、それはそれでいいかなとも思うの。 だって来なければ私が愛想つかして出て行ったと思うだろうし。 というか思わせるように、裏工作をリボーン君に頼んだ。 そうすれば悲しまなくて済むよね。 その分、話してしまった2人には申し訳ないと思うけど。 それに、雪に埋もれて誰に知られること無く死んでいくというのも、いいかも知れない。 と、お思ってたりもする。
来たらきたで、隼人は私が死ぬ瞬間を見ることになる。 結局私の我侭。 いろんな人を巻き込んで、迷惑かけて情けないや。 でもね、分かっていても私は……。 隼人、大好きだよ。
「ねぇ。の事好き?」 「はい!愛してます」

死ぬ前に貴方を一りじめしたいと思うの